『そうね……あなたたちの名前は──』  口元に人差し指を当てて考え込むようにその子は言った。 『【渡井ノン】と【渡井シキ】よ』  嘲笑するかのような不敵な笑みでその子は言った。 『だから■■と□□だった時の名前はもう捨てなさい』  くだらないものを扱うように『ノン』と『シキ』という名前を使う前の名前をその子は言った。 『もしその名が欲しかったら、人間になってこの国で一生を終えることね』  馬鹿にするように、そして皮肉を混ぜ入れたようにその子は言った。 『どっちがいい? 森に守られたとーっても安全で幸せになれる国か、いつ死んでもおかしくないこわぁい籠の外か』  まるで赤ん坊を相手にあやしているかのように、その子は言った。   『──決めるのはあなたたちよ』    その子は〝子〟なんてものではなかった。

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