少し昔のあるところ、城壁で区切られた二つの国がありました。西の国は寂れ、東の国は栄えています。  ある日瑠璃色の珍しい生き物を連れた、マスクで顔を隠す旅人がやってきました。  旅人は東の国に足を進めます。 「歩き疲れたこの足を、しばらく休ませてはくれないか」  東の国の人は告げました。 「すまないが、その生き物を連れては入れられない」  旅人は西の国に足を進めます。 「歩き疲れたこの足を、しばらく休ませてはくれないか」  西の国の人は告げました。 「何の構いもできないが、それでもよければゆっくりするといい」  旅人は西の国で休息を取り、お礼にと歌を奏でました。  するとどうでしょう、西の国に緑が生い茂り、豊かな国となりました。    一年が経ち、旅人は豊かになった西の国を去りました。

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