翌日。女王死去。死因老衰。 「私も数年前まで旅をしていましてね、この国に来て女王に仕えたのが五年前のことです。その時の姿は六十代くらいのものでした。今はおそらく百を越えた体だったでしょう。身体的には長生きしたようなものでした。記憶も衰え、もう目も耳も満足に機能しない身体。名前を覚えることができなくなるほど老衰しきり、私にできることは最期まで女王に寄り添うことだけでした。その最後にお二人と談笑できて幸せだったと思いますよ。ありがとうございます」 「自分たちは……別に……。あの、国民は……」 「街を見て気づかれたと思いますがもう誰も残っていません。女王はまだいると思われていましたが」 「…………」 「そんな顔なさらずに。人の死はこの世界の流れ当然のものですよ。流れを受け入れるしかないんです。この国はその流れを速めてしまっただけ」 「皮肉なことに、私たちはその時間の流れからはみ出してしまいましたがね」

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